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気づくと、駅の改札の外に投げ出されていた。
さっきの駅員が頭を抱えて立っている。
「これは、どういう…」
「お客様、緊急停止ボタンが押されました。
映画の流れを壊す方は、そこで降車いただくことになっています」
展開を乱すと、安全器具によって駅に引き戻されるらしい。
「ちゃんとチェックしてるんですね」
「はい、作品は駅長が目視し、他の乗客のご迷惑にならないよう努めています」
演技は失敗だったが、なんとも言えない高揚感が俺を包んでいた。
あまりに短かったので、
もう少し映画の世界を体験してみたくなった。
衣装を返却し、すぐ参加できそうな映画を探した。
セクシー路線に目がいく。
人気の若手女優が濡れ場を披露した、と話題になった作品だ。
指定席で彼氏役を選べば、もしかしたら…。
期待に胸を膨らませ、チケット1枚買うことにした。
「すいません、お客様」
駅員がすっと入り込んできた。
「こちらなんですが、R-18指定、
18歳以上専用電車となります。高校生は残念ながら、乗れないですね。」
しっかり見られていたことに少し恥ずかしくなったが、
駅員は表情を変えずに続けた。
「学割がきく作品もありますよ。青春路線の映画です。
あまりセリフも少ない作品ですし、いかがですか?」
こうなると引っ込めない。切符を買うことにした。
衣装も、自前の制服でいいようだ。
発車時間が迫っている。
台本は向こうに行ってから読もうと、早速スクリーンに入った。
“プルルルル…まもなく、
青春路線『ランニングデッド学園』行き出発となります。
駆け込み乗車はお止めください。次の映画をお待ち下さい”
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