1. 黄金色

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「明日の読書会に出てくれんかなあ。そしたら、スマホのことは黙っとくし」  みちるは図書委員だ。放課後に時々、図書室で読書会が開かれる。同じ本を読んだ面々が、集まって意見を交わす会だ。本は好きだが、別に他人の感想なんかどうでもいい。 「嫌やって。本読んでないし。明日までってのは、キツイって」 「それは大丈夫。(あお)くん、前にその本読んでた。てか、打ち合わせで本決める時、青くんに出てもらおうと思って、その本推した」  何なんだ。はめられた。 「高山進の『月明りの村』やから。一応、明日持ってきて」  確かに、その本は四月の初めに読んでたけど、やり方が汚い。計画的犯行だ。 「やっぱ、出んし」  反撃を試みる。すると、みちるは廊下の方を見て手を振った。 「あ、杉山先生、いいところに。桂木青くんがさっき教室でスマホを……」  杉山は指導部の先生だ。慌てて立ち上がり、みちるの行く手を阻む。 「待て。わかった。出る、出るって」 「青くんなら、そう言ってくれると思った」    みちるはにっこり笑う。 「よろしく」と右手をひらひらさせて帰っていった。  ぼくはドアから左右を見て廊下を確認する。すると杉山先生なんぞ、どこにも見当たらない。    やられた。  あの悪魔め。  ぼくは、さっき一瞬でも、みちるの髪が天使の巻き毛のようだと思ったことを後悔した。
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