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すいぞくかん
透明な魚が頭の上を泳ぐ。時々プカプカと浮かんでは休む魚は、感情と空にあわせて色を変えていく。私以外の人には見えない魚が、今日も人の数だけ空を泳ぐ。向こう側を飲み込むように透けさせながら、プカプカと、ぼんやりと、時には休んだら死んでしまうかのように猛然と。
奇跡みたいな綺麗な色も必然みたいな汚い色も、混ざって透ける嘘みたいな、本当の、私にしか見えない私の水族館。
「うそつき」
真っ赤な魚がヒラヒラと尾を揺らしながら、猛然と妹の頭の上を泳ぎまわる。威嚇するみたいに餌をつつくみたいに、私の魚に飛び掛かろうとする魚は少しサメに似ている気がする。小さな魚に不釣り合いな大きな牙が私の魚に届く事はない。
「ほんと、」
「うそ!」
「……嘘でもいいよ。本当だけど。」
汚くて汚れてて鱗の剥げた魚もいるけど、牙が刺さって血を垂らしてる魚もいるけど、空色の中を、夕焼けの中を、夜更けの海みたいな濃紺の中を、ネオンライトに照らされて泳ぎ回る魚は、本当に綺麗だから、見えたらいいなと思ってた。
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