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「おかえり!」
「・・・ただいま」
泣きじゃくっていたのを思わせないような眩しい笑顔でオウカが迎える。リュカはその笑顔を見て初めてホッとして息をついた。
ずいぶん魔王城で暮らして、やはりほだされてしまっていたのかもしれない。早くこちらの生活に戻らなければ。
「ジーンさんがリュカが帰ってきたって話したら早く上がらせてくれたの」
「そうか。よかったな」
「うん。もうすぐ夕食の仕度ができるから、もうちょっと待ってね」
オウカはリュカの家の近所に住んでいる。もちろん一人暮らしだ。
日中はこうしてリュカの自宅で一緒に過ごすことが多かった。料理の仕度はもっぱらオウカの仕事だった。リュカがいない間も、ここで過ごしていたのか生活感がしっかりと残っており、掃除もしっかりと隅々まで施されているのもわかった。
「ありがとな、オウカ」
「え? なにが?」
「部屋。掃除とかしてくれてたんだろ」
「ああ。そんなの、いいよ。私も自分ちにいるよりここにいる方が落ち着くっていうか。それでよく入り浸ってたの」
少し恥ずかしそうにそう言いながら料理の手を止めずに動かす。照れ隠しのようだ。
リュカはそんなオウカに微笑みながら着ていた勇者服を脱ぎいつも着ているラフな上下に着替えた。やっぱりこの方が落ち着く。
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