+++ 3

2/28
前へ
/202ページ
次へ
 薄気味悪い森。何度通っても慣れない。ビクビクしてしまう臆病者の自分も相変わらずだ。  ーーバササササ! 「うわあああ!」  大きな羽音に驚き声をあげる。次の瞬間突然体を捕まれ浮遊感に包まれた。 「え!? うわっ!」  地面が遠ざかっていく。体を締め付けられ離れられない。身動いだが、ここで放されると地面に叩きつけられると思い直しゾッとした。空を飛ぶのなんて初めてだった。魔物のなかには鳥のように空を飛べるものもいると聞いたことがあるが、魔物自体ほとんど見たことがない。  そして自分を拐うこの者がいったい何者なのか。  道中を魔王が守ってくれていた。魔物が近づかないようになにか術を使って。  だが、はじめて出会った。  もう、魔王はリュカを守ることをやめてしまったのだろうか。  都合のいいことを考えているとリュカはわかっていた。優しくされ、生かされることをあんなにも嫌っていたのに。  いざ、こうして簡単に魔物に拐われてしまうと、恐ろしさの方が勝ってしまう。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

804人が本棚に入れています
本棚に追加