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「うっ」  地面に叩きつけられるように放られた。息がつまる。痛む体を押さえ起き上がるとキッと睨み付けるように自分を拐ってきた魔物の姿を目にいれた。  背中に大きな黒々とした羽を携え、二足歩行ではあるが、顔は獣のそれ。初めて見る魔物はとても恐ろしいものだった。  考えていたものと違った。魔王は角や尖った耳鋭い爪を持ってはいるが、その姿は人間に近かった。それは、アビルやジュマルだってそうだ。だから、魔物もそういうものなのだろうと。  それか、獣の姿なのだろうと。  しかし、目の前にいるのはどちらともつかない異形な姿。恐怖を感じるには十分だった。 「貴様! 人間!」  唸り声のように叫ばれ、萎縮する。ピリピリと空気が振動するようなおどろおどろしい声だった。 「人間、人間、人間! 殺してやる!」  恨みの籠った目を向けられ、ゾワリと体が震えた。  魔王の恐ろしい纏う冷淡なオーラとは違う。まっすぐ向けられた殺意。  魔物はリュカの喉仏を目刺し飛びかかってくる。身がすくむ。しかし、簡単に殺されるわけにはいかない。その思いがリュカの体を突き動かした。 「うっ、ああああああ!」  どうにか動かした体は、喉を噛み千切られることは避けられた。しかし、その牙はリュカの肩口に突き立て、ゴリッと骨を削られるような音がした。  焼けるような痛み。悶えながらも、必死に抜いた短刀で、魔物の腕に突き立てた。
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