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「ぎゃああああ!」
魔物は雄叫びをあげリュカから牙を抜き後ずさった。リュカの手から離れた短刀が魔物の腕に突き刺さったままだ。
「ぐっ」
痛みに顔をしかめ、肩を掴む。血が止まらない。
「くそ! 人間め! いい気になるな! あの魔王を魔王の座から引きずり下ろせば、人間界などひとたまりもない!」
「ーーは?」
「仲間たちが魔王を襲撃している今、人間たちの終わりも近い! 我らがギオラ様が魔王になった暁には人間界を制圧し、俺たちの時代がやってくるのだ!」
魔王を襲撃しているーー。その言葉に、目を見開く。
「今の魔王はダメだ! 人間を襲うな人間界には出向くなと力を振りかざし魔物たちを押さえ付けお陰でこっちは鬱憤ばかりがたまる! ギオラさまでないと!」
「魔王が・・・・・・」
その話が本当なら、魔王のお陰で人間界は平穏に暮らせているのだということになる。だとすれば、魔王を討伐したり魔王が代替わりをしてしまえばーー。それこそ、この魔物の言うギオラという魔物に代わってしまったとしたら。
人間界はこれまでにない恐怖に襲われることになるのではないか。リュカはゾッとした。そんなこと絶対にあってはならない。
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