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「アビル・・・・・・。しかし」 「その人間の言う通りです。まずはお自分の怪我をどうにかなさってください。このままでは魔力がつきてしまいます」  アビルにそう指摘され、ルカは渋々自分の右手を胸元に翳し目を閉じた。リュカには何が起きているのかよくわからなかったが、魔力を使っているのだろうことはわかった。そして、以前自分にも使っていた治癒能力の類いだろうと。 「傷は塞いだ。だから、リュカの傷を治してもいいか」 「ーーはぁ。勝手にしてください」  自分の傷を治すのも、リュカ次第なのかと呆れたように息を吐いてアビルは立ち去る。馬鹿馬鹿しいと吐き捨てながら。  リュカの手が伸び傷口に触れる。ズキンとした痛みに顔をしかめると、ルカが痛そうな顔で眉を寄せた。痛いのは自分の方なのにとリュカは複雑な感情を抱いた。  以前感じたのと同じように肩口に温もりを感じる。次第に傷口は塞がり、痛みも消えていた。 「ーーありがとう」 「礼なんて、いい」  優しくされるのが、嫌だった。  その意図がわからなかった。ほだされたくもなかった。それはほだされそうだと言うことだったのだ。  冷酷で非常に思える魔王の纏うオーラそれとは裏腹な、優しい行動の数々。  その行動は本物なのだと、襲ってきた魔物によって証明されたのだ。
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