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「リュカがいないから」 「は、はあ?」 「リュカに殺されたかった。でも、手放してしまった。もう戻っては来ないだろうと思った。ならば、いつ死んでもどうでもいいと思った」  死にたがりの魔王。本当に前代未聞だ。聞いたことがない。  でも、確かに目の前にいるのだ。なぜかそいつは、自分に殺されたいと言う。いい迷惑だとも思う。 「死ぬのは許さない」  生きるのも死ぬのもリュカがすべてだと言った。  ならば、生きることもできるだろうと。 「あのギオラって魔物は人間界を制圧し魔物の世界を作るのが目的だって聞いた。そんなことさせたくない。俺は勇者だ。人間界を脅かすものから守らないといけない」 「ああ」 「だから、ギオラに魔王になってもらったら困る。魔王を討伐しない勇者なんて、勇者の称号を剥奪されるかもしれないが、どうにかお前のことをわかってもらえるように努力したい。お前が人間界を守ってくれると言うなら、俺はお前を討伐しない道を選ぶ」  勇者として、国のために働くものとしては正解なのかはわからない。だが、人間界を守るものとしては、この選択肢しかないと思った。 「生きてくれ、俺のために」 「リュカのため・・・・・・。わかった」  あっさりと承諾してしまう。つくづくおかしな魔王だ。
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