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ルカの部屋に戻ってきたリュカは、眠るルカをじっと見つめた。起きているときに口づけなど恥ずかしすぎてできるはずがなかった。しかし、自分はギオラに王座を譲るわけにはいかないのだ。あの一瞬の対峙、一瞬目が合っただけで感じたまさに冷酷非道とも思える破壊衝動を内に秘めたような瞳。
勇者として、人間界を守らなくてはいけない。だから、今することは、人間を守るために行うのだ。
「よし」
気合いを入れねば踏ん切りがつかない。口づけなど、この間無理矢理ルカに奪われたことくらいしかないのだ。自らなどもっての他。ただ口を合わせるだけでいいのだろうか。
別に、特別な意味があるキスではない。ただ生気を与えるためのものだ。意を決して、リュカは唇を寄せた。
合わせた唇は、躊躇いがちに触れ合う。これで本当に生気は与えられるのだろうか。
しかし、その答えは少ししてわかることとなった。
ーークラクラする。
体から力が抜けていくような気がする。立ち眩みのようなグワンと世界が回り、唇が離れた。ずり落ちるように半身だけベッドに倒れ込み、意識が遠退く。
これが、生気を与えるということなのか。リュカはそのまま意識を手放した。
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