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「お前がなにかリュカに吹き込んだのだろう!」 「私はただ、聞かれたことに答えただけ。魔王様は大丈夫かと聞かれたので、生気のことをお話しし、与えるにはどうしたらいいのか尋ねられましたのでその方法をお伝えしただけのこと」 「リュカから聞いてきたと?」 「はい。このチャンスを逃すべきではないと思いまして。いつまでも強情に人間からの生気を奪わなければ、いずれ魔王様は死んでしまいます。それはあの人間も、本意ではないようなので」  過去の魔王のように、生気を得るために人間を捕らえることをしない魔王に、アビルは気を揉んでいた。生気さえ確実に蓄えていれば、ギオラのような輩にあれほど手酷くやられることはないのだ。  アビルにとっても、ルカが生きる気になってもらえるなら、大嫌いな人間であるリュカの存在も利用しない手はないと思っていた。 「だからといって、俺は、リュカを糧にするつもりはない」 「その人間が、それを望んでいたとしてもですか」 「リュカが、本心で望むわけがない。人間を救いたいからだろう」 「だとしても、互いにとって需要と供給は一致しているように思えますが」  リュカに生きてほしいと願われた。そしてそれを了承したのはルカ自身だ。  しかし、それとこれとは話が別だ。ルカはリュカを大事にしたい。ただ、愛したいのだ。口づけだって、それ以上のことだって、そこにはただ愛さえがあればいい。  魔王である魔物である自分が持つ感情には相応しくない想いだとしても。  生気を与えるだけの口づけなど、欲しくなかった。  それが、例えリュカからのものだとしても。
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