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リュカが目を覚ましたのは、ずいぶんと時間が経ち、すっかり日も落ちてしまった頃だった。
「・・・・・・あれ」
「リュカ、目が覚めたか」
心配そうに覗き込む顔に、怪訝な顔をして布団を引き上げた。だから、本当になんでこの魔王はこうなんだ。
「その顔、やめろ」
「その顔とは」
「いかにも俺を心配してますって感じの顔だ!」
「心配はしてる。当然だ」
当たり前のように言われると、それ以上なにも言えなくなってしまう。
ぐったりと眠っていたはずの魔王はいつのまにかスッキリと覇気のある顔をしていて、弱っていたときにはまだ可愛げもあったはずがすっかり、それもなくなってしまっていた。
「なんで、生気を俺に与えた?」
「なんでって、言っただろ。お前に死なれたら困るんだ」
「お前は、同じ人間ってだけの者たちのために自分の生気を魔王に渡すのか。なぜそこまで自分を犠牲にする」
「・・・・・・俺は勇者だ」
「答えになっていない」
「なってる」
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