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使い捨ての勇者。きっと、魔王にもその事はわかっているのだろう。勇者であるリュカの力量を見ても、勇者に選ばれるような猛者ではない。
負けることを見越して選ばれたのだと。そして、リュカ自身もそれをわかっているはずであることも。
「それに、俺が人間界を襲わせないのは、ただリュカがいるからだ」
「ーーは」
「リュカがいなければ、人間界がどうなろうが、魔物たちが人間界をどうしようが興味はない。そういう面ではギオラと変わりはしないだろう」
それでもーー。自分の存在ひとつで、人間界が守れると言うのなら。
結局、魔王が自分に拘る理由さえわからないままだけど。
「俺が、ここにいればーー。お前は生きようとするのか? ここにいれば、これからも、人間を襲わないと約束してくれるか」
「いいのか。リュカは、本当にそれでいいのか」
「いい。勇者として、人が守れるなら」
誰にも必要とされてこない人生だった。側にいつもオウカがいてくれたけど、いつも虚しかった。
初めて必要とされたのだ。使い捨ての勇者だとしても。俺にしかできない任務なのだと言われているようで嬉しかった。なんとしても、爪痕を残したかった。
自分でも、なにか成し遂げることができると、示したかった。
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