2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
金髪と裏切り
私がそれに気づいたのは、寝室の掃除をしている時だった。
ベッドの埃を払おうとして、掛布団に一本の長い金髪が付いているのを発見したのだ。
絶対に私のものではない。まさかと思い、眼を凝らして布団を調べると、更に何本もの金髪が見つかった。
その瞬間に、私はすべてを察した。
(あいつ……。私が留守の間に、またこんなことを!)
激怒した私は、すぐさま寝室を飛び出し、あいつの姿を求めた。
奴はすぐに見つかった。腹の立つことに、庭先で暢気に犬と戯れていやがった。
「ねえ、ちょっと来て」
「え、なに? どうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフ。ベッドにこんな物が付いていたんだけど、どういうことか説明してくれる?」
ぶん殴ってやりたい気持ちを押さえつつ、私が右手でつまんだ数本の金髪を見せつけるように差し出すと、奴はとたんに顔を強張らせた。
「な、なにそれ?」
「とぼけても無駄よ。これ、ヨーコのでしょ?」
「ちっ、違うんだよ! 聞いて、何かの間違いだよ!」
「間違いな訳ないでしょ! あんなことはもう二度としないって約束したよね!」
「ごっ、ごめんなさい!」
「今度という今度は許さない!
この子を家に上げちゃ駄目だって、何度言ったらわかるの!
罰として今月のおこづかいは無しだからね!」
「わああっ、ごめんなさいお母さん! それだけは許して!」
だが怒りの収まらない私は、泣きながら許しを請う小学生の息子と、その傍らで悲しそうに項垂れ、クゥ~ンと小さな声を漏らすゴールデンレトリバーのヨーコを、腕組みして睨み付けるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!