金髪と裏切り

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金髪と裏切り

 私がそれに気づいたのは、寝室の掃除をしている時だった。  ベッドの埃を払おうとして、掛布団に一本の長い金髪が付いているのを発見したのだ。  絶対に私のものではない。まさかと思い、眼を凝らして布団を調べると、更に何本もの金髪が見つかった。  その瞬間に、私はすべてを察した。 (あいつ……。私が留守の間に、またこんなことを!)  激怒した私は、すぐさま寝室を飛び出し、あいつの姿を求めた。  奴はすぐに見つかった。腹の立つことに、庭先で暢気に犬と戯れていやがった。 「ねえ、ちょっと来て」 「え、なに? どうしたの?」 「どうしたのはこっちのセリフ。ベッドにこんな物が付いていたんだけど、どういうことか説明してくれる?」  ぶん殴ってやりたい気持ちを押さえつつ、私が右手でつまんだ数本の金髪を見せつけるように差し出すと、奴はとたんに顔を強張らせた。 「な、なにそれ?」 「とぼけても無駄よ。これ、ヨーコのでしょ?」 「ちっ、違うんだよ! 聞いて、何かの間違いだよ!」 「間違いな訳ないでしょ! あんなことはもう二度としないって約束したよね!」 「ごっ、ごめんなさい!」 「今度という今度は許さない!  この子を家に上げちゃ駄目だって、何度言ったらわかるの!  罰として今月のおこづかいは無しだからね!」 「わああっ、ごめんなさいお母さん! それだけは許して!」  だが怒りの収まらない私は、泣きながら許しを請う小学生の息子と、その傍らで悲しそうに項垂れ、クゥ~ンと小さな声を漏らすゴールデンレトリバーのヨーコを、腕組みして睨み付けるのだった。
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