それは10円玉よりも高く

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 新しい茶碗を買いにデバートへ足を伸ばすと、そこはクリスマスムード、赤と緑の2色で彩られていた。私は、そんな浮かれ気分な店を避けて、茶碗を探していた。といっても、クリスマス贈答用のものが置いてない店はほとんどなく、灰色気分な私は、目を合わせないようにして、目的を果たそうとしていた。けれども、何件か回ってもしっくり来るものはなかった。どれもおしゃれで見目麗しく、私にはよく分からないものだけれど、きっといいものなのだろうということは、その値札が示していた。勘違いしないで欲しいのは、それらに私は不満だった訳じゃない。ただこれを使いたいと思わなかっただけ。いや、きっと私はこれらのものを使いこなせないと感じていただけ。
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