怨念貯蓄箱

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怨念貯蓄箱

 引っ越し先のアパートの押し入れに、その箱はひっそりと置かれていた。  気になって中を見てみると、出てきたのは人の頭の形をした貯金箱だった。  口元が少し空いていて、そこから中にお金を入れる設計らしい。  人に金を食わせるって、貯金の仕方が悪趣味だ。それに、入れた金を出す場所はないから、溜まったらこれを割らないと中身は取り出せないらしい。  人間の頭部を叩き割って小銭を取り出す…それもまた悪趣味だ。  押し入れにしまい込んであったところを見ると、何かの理由で手に入れはしたけれど、とても使う気にならず、でも捨てるのも不気味で放置しておいたというところだろう。  俺も使う気はまったくないから、このまま押し入れに戻しておこうか。  そう思い、箱に貯金箱をしまおうとした時、箱の底に紙切れが入っていることに気がついた。  取り出し、書かれて文章を読む。 『これは怨念貯蓄箱です。あなたの怨念を貯めることができます』  怪しさがさらに倍増した。  何だよ、怨念の貯蓄って。もうその時点で意味が判らない。  どう考えても趣味の悪すぎるジョークグッズだ。押し入れに放り込んで二度と触らないぞ。  そう思ったが、翌日、俺はしまい込んだ箱を押し入れから引きずり出していた。  会社の先輩にとにかく嫌な奴がいる。  俺の手柄は全部奴のもの。でも失敗はこちらの責任。  顔を見るだけで腹立たしさがこみ上げるが、仕事の先輩である以上、関わらない訳にはいかない。  今日もあいつに振り回されて散々だった。その憤りを何かにぶつけたいと思った瞬間、貯金…じゃなかった。この怨念貯蓄箱のことが頭に浮かんだんだ。  昨日の紙切れの続きを読む。
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