新命路

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 なぜジム・パットンともあろう男がそんなおろかな真似をするのかマーには理解不能だったが、ルーナとジョッシュの動きは、どこにも接点がないはずなのに、マーを混乱させ、対応を誤らせ、結果として基地の喪失とともに”不死鳥結社”壊滅したのだ。  その結果が全て、というものだろう。  とにかく、今はこの秘密基地は、ルーナたち神話人種の病院、研究所に成り下がった。 「おい、また、おまえのいたずらか、メ~イ!」  その病院の廊下に、西城の声が響くのは、今の恒例行事といってよかった。 「へ~ん、だったらどうしたよ~あっかんべ~」  その少女、鮮やかなライオンのような金の鬣を持った幼女は笑って駆け出す。 「くそ~後でお尻ペンペンだぞ~」トイレ修理の”すっぽん”を持った西城がわめく。  快活な幼女だが、実際はマーと同じく、半ば人工的に造られた”擬似神話人種”であり、”キメラウイルス”の保菌者であった。人間に感染して、”不死身”にしたり”変身”させる”病原菌ウイルス”の”苗床”として作られた”失敗作”の一人なのだ。  いつ、彼女の持つ遺伝子が暴走するかわからない。そして、暴走した結果どのようなことが起こるか、誰にも予測できない。  それは彼女自身でもだが、彼女の持つウイルスに感染した人間にも、だ。その予測不能な暴走の結果”不死鳥結社”に都合の良い変化を起こした分だけを淘汰させる。  この幼女、名前をメイ犬神という。今は、幼女の姿をしているが、一時期には”青鹿晶子”という日本人女の姿をしていた。  ジョッシュが日本にいたときに愛した年上の女だ。彼女の遺伝情報を使ってマーが作り上げた、神話人種モドキだった。  しかし、その遺伝子暴走の結果、今は青鹿晶子とは似ても似つかぬ混血東洋人のような姿になってしまっていた。
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