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それは、まさに暗雲、嵐が去って、薄日が差したような、伸びをして深呼吸したくなるような感覚であった。
そのせいもあるのだろうか、セイタンズ・エンジェルスに代表される、重武装暴走族も、絶滅はしていないが、それでも昔ほどの勢力は、見る影もなかった。
その意味では、社会風潮的には、なんだか、コメディか漫画のワルモノという感じで犯罪者を見る、根拠のない楽観主義が、米を覆っていた。
その風潮の発信源に、NYに本拠を持つ、ルーナ王女をトップとする”大連盟”の存在があることに異論を持つ人はいないのではないだろうか。どこで、どうして、ということを正確に分析するのはまだその変革の渦中にあって、後の時代の研究者、評論家の役目というしかないのだろう。
それほど長い時間ではないが、ルーナ王女が米のTVに出ない日はなかったといっていい。異国の王女というファンタスティックな存在でありながら、この時代の大統領よりも米国民の心をがっちりと掴んでいた。発言に特段の目新しさがあったように思われないが、それでも、なぜか、ささくれだった米国民の当時の風潮を慰撫し、その結果か、かえって経済は穏やかに、しかし確実な成長路線を示したのだった。人心が安心することで、財布の紐がゆるくなったということは否定できないようだ。
米の軍事攻勢も、実際は予算的には低くなっているのだが、外交的行動や経済援助を重視することで、平和裏に中ソの”赤い帝国”の封じ込めにたくみに成功していたのだった。
アキラ・イヌガミという日本人ルポライターが、”米の静かなる革命/”不死鳥集団”の終焉”という一文を寄稿し、有名な賞にノミネートされたのは、まだ、後の時代の話である。
とにかく、そんなこんなで、アラスカで何があったのかと問う人間は、少なくとも米合衆国本土には皆無だったのである。
しかし、実際は違った。
あのレーザービームは、偶然でもなんでもなかったのである。まさに、”敵”を倒すために、それは、発射されたのだ。
だが、その事実は、あの犬神明のルポにもふれられてはいなかった。それが、意図的なものであったか、単に取材されなかったからなのかは、定かではない。
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