新命路

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 もともとは、神話人種の不死身能力を研究するために極悪非道な人体実験を行ってきた施設なのだが、その分、確かに成果もあげてきたといわざるを得ない。  そのおかげさまで、西城恵も、再び”準不死身人間”になっていた。かつて特殊な血清を打って、一時的に不死身人間になっていたが、その血清の効果がなくなって、通常の人間に近いレベルに戻っていた。そこに再度、ここで開発した最先端の特殊な処理をした遺伝子ウイルスを注射したのだった。それは、西城の肉体レベルを再度、不死身人間に近いレベルまで上昇させた。  しかし、それでもまだ、あの不死鳥結社の人間の望むレベルからすると明確な”落第”だったというのだから、彼らの要求するところがどれほどかなり高かったかわかろうというものだ。  もっとも、彼らがそこそこで折り合っていれば、十の昔に人類は核の炎で全滅していたのだろうが。  どうも、”不死身人間”とか”神話人種”というのは、この研究病院の医者どもに言わせると、遺伝子レベルの”死ねない病気”であり”ほかの生き物に変身しちゃう病気”らしい。  元々は、遺伝性は乏しいが、細胞の中にもぐりこんでいろいろと”患者”に悪さをする”暴走ウイルス”による病気だったというのだ。  ”不死身”であることは、その個体にとっては、ラッキーなことだったかもしれないが、種族としては強すぎる個体が生き残ることで子孫が残せないよりは、簡単に死ぬが、子孫繁栄というほうが、望ましく、神話人種は自然に淘汰されたということらしい。  今この世界にいる神話人種とは、まさに彼らの生き残りに過ぎなかったのである。  ここは、そうした数少ない神話人種のための、専門病院といったところか。  マーも、ここで拷問さながらの人体実験を経て生まれた、哀れな”擬似神話人種”だったらしい。  やたらに頭がいいが、めった以上にしぶとく死なないが虚弱体質の個体。  子供のような見てくれも、実際はその異常個体ゆえの姿らしい。  多くの”実験個体”が作られては、死に、あるいは失敗作として捨てられた。その中で、しかし、しぶとく、まさに根性一本で、彼女、マーは生き延びたのだった。  しかしただの虚弱体質ということだけではなかった。その点では、天は公平だったといえるかもしれない。マーは天才だったのだ。
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