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時は
江戸時代後期。
空からの眺めは良い。
遮るものが何もないのだ。
彼女が彼を見つけたのは、江戸に初雪が降った日だった。
彼は、古い屋敷から格子戸を開けて出てきて、徐に空を見上げた。
今年最初の雪は、まだ名残惜しく照らし続ける太陽の光に反射して、キラキラと、氷菓子かザラメのように江戸の街に降り注ぐ。
彼は、しばらく雪が降るのを眺めていたが、寒くなったのか襟元を直すと、スタスタとその場を去った。
「何を熱心に観ているの?P06」
ミセス・ジョーンズは冷めたであろう珈琲をひと口飲んで言った。
彼女、P06は答える。
「男性が居たの。男性だと思うのだけれど。素敵な、薄い布を着ていたわ」
ミセス・ジョーンズは笑った。
「検索かけてみた?何時代を観ていたの?」
彼女は目を閉じて頭の中で検索してみる。
(江戸時代 薄い 布 着る)
「着物?」
「そうよ、着物」
彼女は目を輝かせた。
「着物、すてき!ねぇ、ミセス・ジョーンズ!私あの街に行きたいわ!」
ミセス・ジョーンズはまた笑った。
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