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世界は島もなく、たった一つの大陸と取り囲む海で成り立っていた。
人類が誕生し、子孫を残し、多くの文明を築き上げてきた。
しかし、ある事をきっかけに世界は生と死を巡り、大きな争いが勃発する。
事の発端は、とある人物が細胞分裂の限界を突破した、という一つの報告書だった。
そこには、特殊な電流と光を全身に一定時間当て続けると細胞が若返り、人は永久の命を手に入れることが出来る、という実験結果が書かれていた。
人々は驚愕した。
驚いたのはその方法を考えついたのが生物学者でも科学者でもなく、神からのお告げを聞いたという一人の少女だったからだ。
勿論、最初は誰も信じなかった。しかし、育ての父が見たというその少女の気がかりな言動、神の声を聞いたと自ら証言している点、更にその難しい報告書も全て自分で作成し、内容も理解出来ているというところから疑いようもなく、神の助言であると世間に認められた。
その少女が書いた報告書をもとに作られた細胞活性化装置、通称「コクーン」が開発された。
そして、人々は二つに分裂する。
その細胞分裂を無限に行う方法を用いて人類が不死身になることで、死の恐怖から逃れ、無限の時間の中で生み出される知識と経験を手に入れようとする人々。
人類は死から多くを学ぶことが出来、逃れることは決してしない。人道を優先すべきであると主張する人々。
言い争いは口論だけにとどまらず、ついに紛争にまで陥った。その争いは人が人を襲うだけでなく、獰猛な動物や殺戮兵器なども使うほどの壮絶なものだったという。
争いが収まった数十年後、聖歴元年。ついに両者はそれぞれの国を建国した。
それが現在のボヌール国とインモートランド。
ボヌール国はコクーンの使用を禁止し、国民の意思の元で国を作り上げる国民主権を定義した。
インモートランドは逆にコクーンの使用を義務化する法律を設置。コクーンを専門に取り扱う病院『細胞科』に月に一度受診することが義務付けられた。神のお告げを受けたとされる少女、カスミを中心とし、国民全員が何不自由なく平和で幸せな土地を築き上げると法に記した。
と同時に、両国で結ばれた二つの条約がある。
お互いに一切の干渉を禁止する条約。情報、物資、人は勿論一切の出国を認めない。
十年に一度、十一月二十日から一週間、昼十二時から十八時までの期間に国境にて戦争を行う。
これ以来、二つの国は混じりあうことなく、それぞれの国で一つの世界を作り上げていった。
そうして時は流れ、聖歴千八百年という節目を迎えようとしている時、インモートランドでは一人の男が前代未聞の快挙を成し遂げた。
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