ムカデのいない日々

ムカデと私の生活

　靴を履いて数メートル歩く。ぷつり、と音が鳴った気がした。ずきりとした痛みを爪先に感じ慌てて靴を脱ぐ。靴の履き口を地面に向けて振ってみると、大きな体を持ったそいつが現れる。「やられた！！」大きな体を素早く動かしてそいつは逃げていくが、それどころではない。噛まれてしまったと判断すれば、すぐに対処しなければならない。ずきずきとした痛みが爪先から脳を刺激するようで感覚が麻痺していく。毒が回る前に冷やして消毒をする。ぱんぱんに腫れる足の指を見て逃げたあいつのことを思い出す。「この恨みは一生忘れないぞ」恨み言はそいつには届かなかった。