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あっけからんと笑う兄を電話が呼び出した。兄さんはソファから起き上がる気がないようだ。僕は電話を取り、手近な紙を引き寄せる。
「はい。灯籠新聞です」
「ああ、ヒカル君か。ちょうどいい」
口調と言い、気だるげな声と言い。僕の手は受話器をそのまま落とそうとしていた。
「ハクヤ君に変わってくれ」
「はい、喜んで」
僕は兄さんが読んでいた郵便物をひったくり、代わりに受話器を指さす。
「えー。誰だったの?」
「トバリさんから、兄さんにご用事があるそうです」
「うわぁ。トバリさんかぁ……」
それは僕の台詞です。
兄さんは重い腰を上げてデスクに座り直した。かったるいと言わんばかりに肩と頭で受話器を挟んで自身の手帳を取り出す。
「あー。うん、うん。俺にもそれは来たよ」
僕は兄さんが机に広げた郵便物を仕分ける。中には兄さん宛てではなく、他の社員に宛てられた物も混じっていた。ポストから出す時にどうして確認してこないんだか。
「ふーん……。そう……。まあ、確かに気になってはいたんだよねぇ。あの人の身辺、前からゴタゴタしてたし? 君がそう言うのなら話しに乗ってあげようじゃないか。今はそこまで忙しくないし、ヒカルくんに頼んでみるよ。俺は顔が知れてる可能性もあるんでね」
背後でさも当然の流れで面倒ごとを押し付けられた気がした。
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