第二章 水の中

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 しばらくすると、睡魔が襲って来た。でも、何故か眠れない。来る日も来る日も不眠症との戦いは続いた。 「魚は眠らないんじゃ無くて、眠れないってことか・・・」  そんなことが分かったところで事態が改善するワケもなく。不眠症で気が狂いそうな日々。それに、息苦しさも伴って、始終口を開けたまま泳ぐものだから、何でも胃の中に飛び込んで来た。半寝半起きの放心状態で丸呑みするのだから何が腹に入ったのかさえ分からぬ有様。 「シュッー」  そんな音が水中に響いたと思いきや、イキナリ横腹に激痛が走った。暴れ来い出したい程の激痛も、しばらくすると消え去り、それと共に心地よい気分に包まれた。自然と目が虚ろになり、睡魔に従順に従う自分を感じた。 「やっと、これで眠れる」  オレは安堵の表情を浮かべた。結、悪かったな。オレは最後に心の中で結に謝った。 「おーい、やっと、人食い鮫仕留めたぞ」  水面からそんな声が聞こえた気がした。
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