第一章 湖上デート

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 しめしめ、いい展開だ。 「そうだ、オレ、ポットにコーヒー入れて来た」  オレは予め睡眠薬を塗ったカップにポットのコーヒーを注ぎ込むと結に手渡した。  早く飲め、そして、早く眠れ、そしたら、湖の底だ。いや、海の底か。この湖は海に続いている。早く眠れ、早く眠れ、そう頭の中で反芻するようにオレは祈った。 「人生のうち半分は寝ているって、もったいないよねえ」  結の突拍子もない話の切り出しにオレはぎくりとした。まさか、オレの心理を見抜いているってことないよな。 「魚は寝ないそうだよ・・・」  オレはわざとらしく、惚けた返事を返した。 「眠くならないのかなあ・・・」 「それは、魚に聞いてみないと分からないさ。まあ、魚と会話出来るようになるのが先だけどな」 「そうかなあ、百聞は一見に如かずっていうものね。魚になっちゃえば分かるんじゃない」 「そういう考えもあるか・・・」  お前は魚になるんじゃなくて、魚の餌になるのさ。オレは上から目線で結を見ていた。  今の翼は、権威欲が人間的愛情を上回っていた。でも、その傲慢な奢りが、とんでもない人生の第二幕へと翼を追いやることになるとは、当の翼も知る由もなかった。
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