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しめしめ、いい展開だ。
「そうだ、オレ、ポットにコーヒー入れて来た」
オレは予め睡眠薬を塗ったカップにポットのコーヒーを注ぎ込むと結に手渡した。
早く飲め、そして、早く眠れ、そしたら、湖の底だ。いや、海の底か。この湖は海に続いている。早く眠れ、早く眠れ、そう頭の中で反芻するようにオレは祈った。
「人生のうち半分は寝ているって、もったいないよねえ」
結の突拍子もない話の切り出しにオレはぎくりとした。まさか、オレの心理を見抜いているってことないよな。
「魚は寝ないそうだよ・・・」
オレはわざとらしく、惚けた返事を返した。
「眠くならないのかなあ・・・」
「それは、魚に聞いてみないと分からないさ。まあ、魚と会話出来るようになるのが先だけどな」
「そうかなあ、百聞は一見に如かずっていうものね。魚になっちゃえば分かるんじゃない」
「そういう考えもあるか・・・」
お前は魚になるんじゃなくて、魚の餌になるのさ。オレは上から目線で結を見ていた。
今の翼は、権威欲が人間的愛情を上回っていた。でも、その傲慢な奢りが、とんでもない人生の第二幕へと翼を追いやることになるとは、当の翼も知る由もなかった。
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