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第二章 水の中
いつの間に眠ったのか、目を覚ますと様子が違う。確か湖上のボートの上であったはずなのだが、どう考えても、ここは水の中。でも、全く息苦しくない。それに何故かしょっぱい。まさか、海の中か。
オレは一体どうなっちまったのだ。オレは一体何者なのだ。何処の誰で、今何処にいるかもわからぬまま、オレは流れに身を委ねた。
前方を大きく平べったい生き物が横切った。海洋生物音痴のオレでも見分けがつく、それは正しくエイの雄姿。ここが海であることは間違いないようだ。それにもう一つ気付いたことがある。回りの魚達はオレが来ると一目散に逃げた。どうやら、オレはこの海の中では、かなりエライらしい。陸にいた頃とは雲泥の差だ。
オレは魚になっちまったのか・・・。
「魚になっちゃえば分かるんじゃない」
結が最後に言った言葉が思い出された。
まさか自分が魚になるとはね。これは、結を魚の餌にしようとした天罰かね。死なずに地獄に落ちるとはこのことか。だが、本当の生き地獄は、それから始まった。
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