第三章 船の上

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第三章 船の上

 オレはサメだったのか。不思議に思えるかも知れないが、話す相手もおらず、鏡もない水の中、自分がどんな姿形をしているかなんて分かる筈もない。ましてや魚の身の上。ヒレでは自身の体には触れられない。  それにしても、『人食い』とはエライ言われようだ。人なんか食っちゃいねえ。第一、いくら寝ぼけ眼で大口開けたまま泳いでいたところで、クラゲじゃあるまいし陸上生物の人が勝手に口に入ってくるわけがない。  でも、ちょっと違和感を覚えた。サメのオレがどうして人間の話声を理解出来るのか。オレの疑問など知る由もない船上のクルー達は、オレにローブを掛けるとクレーンで引き揚げだした。オレの身体は徐々に水面へと引き寄せられ、遂には、水上に浮かび上がった。それとともに船上の話声が耳に入って来た。 
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