新しい〇〇

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 海星が自分の教室へ入って席に着く。隣には加恋が座っている。 「美月のことなんだけど」  美月には求める自分の理想像があって、それを演じることで強くあろうとしていた。だけど、現実が追いついていかず、決壊寸前のところまできているように見えていた。 「美月って怪我なの? 本当は違うんじゃないの?」  海星は接骨院が嘘で、本当は病院に通っていると思っていた。背中の怪我が原因じゃなくって、命にかかわるような病気なんじゃないかって。 「ごめん。私じゃ、わかんない」  加恋は鞄を机に置いて何かを探し始めた。海星にはその行動が話を切り上げたがっているようにしか見えなかった。 「頼むよ。教えてよ」  担任が入ってきて、号令で生徒たちが立ち上がる。海星も立ち上がる。 「わかんないんだって」 「加恋が知らないはずないだろ?」 「知らないよ。美月と1年以上は話してないから」  海星は美月の言葉に着席のタイミングを逃して1人で立っていた。想定外だったからじゃない。1年以上前といえば、美月との初めてのケンカや怪我のことが思い浮かんだからだった。  海星の些細な失態に、ここぞとばかりにイジリ始める男子たち。だけど、海星の視線は加恋に向けられて、座ることすら忘れていた。 「亜理紗に聞いてよ」  加恋は黒板のどこかを見ていた。胸まで伸びた髪をかき上げると、白い首元があらわになる。襟から少しだけ飛び出していたネックレスのチェーン。その色はシルバーだった。電車で見せてくれたゴールドではなかった。
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