新しい〇〇

9/12

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 文章にならない加恋の言葉がいくつか続いた。それをつなぎ合わせて要約すれば、美月と加恋は小学5年からバドミントンでダブルスのコンビだった。高校へ進学しても、その関係は続いて7年になる。2、3年でコンビ解消なんてバドミントンでは当たり前の世界で異例の長さなのだという。そのうえ加恋は美月が怪我をしても特定のコンビを組むことはしなかった。復帰を待っていた。オリンピックの夢は2人で叶える夢だったからだ。  だけど、3年生が引退して、自分たちの代へと世代交代した今、残された期間は1年。加恋は自分のために新たなコンビを組む決断をした。それを美月に告げたのが9日前で、その翌日に美月が復帰を決めて、怪我を再発したのが1週間前だった。 「しょうがないよ。自分を責める必要はないよ」  海星はそんな自分の言葉で加恋を救えるなんて思っていない。この状況で当たり障りのないテンプレートを選んだだけで、最も無難な選択をしたつもりだった。 「そういうのいらないから。心配されるの一番嫌いなの」  加恋の言葉に美月の姿が重なる。美月のあの考え方は、加恋の影響によるものなんだって 納得がいった。  予鈴が鳴った。教室から着替え終えた男子たちが出てくると、2人を見てスキャンダルだって嬉しそうに騒ぎ始める。加恋は奪うように体操着をつかんで去っていった。  海星のもとへ群がる男子たち。価値のない追及には心を閉ざしたけれど、聞き逃すことが出来ない一言があった。美月が部活をやめるって噂。誰から聞いたんだって声を荒げたら、亜理紗だって言われた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加