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「これは私達の飲み物で、人間であるあなたには合わないものですから。今後は出さないように言っておきましょう」
ありがとうございます、と小さく返す。今後出ないのなら良しとしようではないか。
そう言えば、昨夜の晩餐ではこれは出てこなかった。あの場で出されていれば、俺は間違いなく飲んでいただろう。下手をするとショック死していたかもしれない。いやそれは言いすぎた。でもそれくらいのショックは俺に訪れていただろう。
それなのに、昨晩はなかった。朝に飲むものなのだろうか。
「王はこれを口にしません。王には必要ないものですから」
俺の考えを読んだアルヴェーンさんが俺が残したグラスに口をつけ、赤い液体を傾けた。こくり、こくりと動く喉元がひどく艶かしくて、思わず目をそらしてしまう。
王には必要のないものであるという言葉に引っかかりを覚えながらも、尋ねる勇気はなく、俺はただ残った朝食を見つめた。
あれだけ美味しそうに見えていたものも、すでに色褪せて見える。食欲はすっかり鳴りを潜めてしまったようだ。
「……王子は、愛らしいですね」
ふとアルヴェーンさんがグラスをテーブルに置きながら、そう言った。俺はその言葉を咀嚼しながら、首を傾げる。
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