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さて、愛らしい、とは。ラルフくんならまだしもこの俺が愛らしい? 吸血鬼の美的感覚はおかしいのではないだろうか。
何も言えない俺に、アルヴェーンさんはまた微笑んで、そのまま去っていった。俺はその後ろ姿を眺めながら、彼は変な人だと印象付ける。
結局、それから1時間ほど朝食と格闘して全て完食した。もちろんあの液体を除いて。正直言って当分何も食べたくない。
満腹を超えた満腹にふらふらになりながら、俺は城の中を歩く。好きにしていいと言われているのだ。どうせなので散策でもしてみよう。
一人でも大丈夫だとは思うが、侍女であるハンナも俺についていくと言って聞かず、二人で城の中を散策することにした。
ハンナは俺には冷たいが仕事には熱い人間だ。だからこそ騎士長さんと一緒に隣国にまで付いてきてくれたのだ。
中庭に差し掛かると、フロレンツの騎士と訓練をしている騎士長さんがいた。騎士長さんが騎士らしく剣を振るう様を初めて見るので、思わずじっと見つめてしまう。
ふと騎士長さんが俺に気付き、切れ長の目を瞠らせた。ハンナに耳打ちされ、小さく手を振ってみると切れ長の目は更に丸く見開かれる。
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