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それから相手をしていた騎士に軽く頭を下げてこちらに駆けてくる。俺の目の前に来ると、すぐに昨夜のように跪いて俺の手を取った。ぎょっとしてしまうものの、動揺を見せればこういった行為に慣れていないとバレてしまうので動揺は心の中だけで留めておく。
「おはようございます、王子。朝から麗しい御身を目にすることができ光栄です」
手の甲に軽く口付けた騎士長さんは、俺なんかよりもよっぽど王子に見える。しかしまぁこんな平凡の手の甲にキスなんてよくできるな、と感心してしまう。
俺は嘘でもこんな平凡を麗しいなんて言えないし手の甲にキスだってできない。昨日王に手首にキスされたことを思い出したけれど、王は俺がラルフくんと信じているからできたのだと納得させる。
さっと手を引きながら俺は挨拶を返す。
「おはようございます。訓練、頑張ってください」
「はい、王子の為ならばどんな訓練もこなして見せましょう」
深々と頭を下げた騎士長さんに、そういうのはいいから、と言葉をかける。頭を上げて立ち上がった騎士長さんは少しだけ嬉しそうに口角を上げていた。この人は本当にラルフくんが好きなのだ。だからきっとこういうことをできて、こういう表情ができるのだろう。でも俺もラルフくんのことが大好きだから俺が騎士長さんの立場なら同じ行動を取るに違いない。だってあのラルフくんの前で跪かない人間は家族だけだから。
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