128人が本棚に入れています
本棚に追加
いざ旅立ち
一つ違いのいわゆる年子の弟と俺は、同じ乳母に育てられた。
俺は美形な両親から生まれた超超平凡な顔つき(決してブサイクではないと思ってる)のある意味異端児だった。六つ年上の兄も美形だ。黄金に輝く髪に冷たく光るアイスブルーの瞳で女性や男性までもを虜にしていると言う。対して一つ年下の弟は誰もが美少女と見紛うほどの可愛らしさ。皆からは天使と呼ばれている。鈴を鳴らしたような軽やかな声に、ふわふわの栗色の髪。くりんとした大きな目に長い睫毛。唇は常につやつやしている。そんな弟とただ髪の毛が同じ栗色で背格好も似ているだけの平凡な俺は、同じ乳母に育てられたが、同じようには育てられなかった。
「ヴィリ王子はみにくいアヒルの子ならぬ、みにくい白鳥の子ですね」
乳母の口癖はもっぱらこれだった。彼女が読むみにくいアヒルの子という絵本に出てくるみにくいと思っていたが実は白鳥の子供だったというのではなく、白鳥の子供だと思っていたら実はアヒルの子供だったという例えだ。
物心つく前から言われていたことなので俺は自然にそれを受け入れていた。
最初のコメントを投稿しよう!