第1章

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目が覚めると、私はベッドの上に横たわっていた。 ベッドと言えども何故だか木の柵で囲われた、動きが制限されるものだ。 辺りを見回せば自分の部屋とは似ても似つかない装飾。誰かしらの家である事は理解出来たが…生憎部屋を訪れる様な友人関係は持っていない。 すると見覚えのない女性と男性が私の顔を覗き、微笑みかけてきた。それは私よりも大きな人間。思わず息を呑む。 何が何なのか分からず、状況を尋ねようとした。だが話そうにも言葉にならない私の声は彼らに届くが理解はしてもらえない。私も自分の発した″言葉″が理解出来ない。 「どうしたのかな?何か言いたそうだ。」 男性が私の行動に疑問を持つ。 一体自分の身に何が起こったのか。 話す事も出来なければ起き上がることさえ出来ない。手を動かす事は辛うじて可能だったがその手は小さくて柔らかそうな赤ん坊の手。 この時私は悟ったのだ…自分が赤子になっている事に…。 時を戻して現代。 自己紹介から始めると、私は佐藤 結月(サトウ ユズキ)25才会社員。全国に多い佐藤さんのうちの一人だ。 趣味はアニメを見たり、声優のイベントに参加する事。もちろん恋人は居ない。俗に言うオタク民だ。 平日の今日はいつもの様に出勤し、大切な推しへ貢ぐ為に嫌々仕事へ没頭していた。 家はアパートを借りて一人暮らしをしていた。大学を卒業し、東京へ上京して働きたいと言うと両親は快く了承してくれた。都心で暮らしたかったのにも理由があった。まぁお察しの通りイベントの際に交通の便が良いからだ。友人と呼べるのはオタ友と同僚くらい。だがオタ友はイベントの時に会うだけで、同僚は仕事の合間に話したり、付き合いで飲みに行ったり深い関わりはしていなかった。 そんなこんなで普通の日常を過ごしていたのであったが…私の最後の記憶、それは車のライトが私に勢いよく向かって来た事と冷たいコンクリートの感触。そこから推察すると私は…死んだのだろう。 つまり、ここは死後の世界かライトノベルとかでよく見る異世界転生というところだろうか。 にしても25歳のいい大人がまさか0歳児から始めるとなると…キツイな、精神的に!
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