第1章

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月日は流れ、転生してから五年。 私はやっと言葉を話す事が出来る様になり、近所の子供達と活発に遊ぶ様にもなった。勿論精神年齢は25歳のままだ。両親に不自然に思われない程度に精一杯子供を演じているが、ボロが出ないか不安だ。 しかし大人になってから鬼ごっこや隠れんぼを久々にやると楽しい。 「こんどはアティーがおにね!」 「わかった!」 私を″アレスティア″と両親は名付け、子供達は″アティー″と愛称で呼んだ。 日本では愛称というものが無かったから新鮮だ。 街は穏やかな住民が多く、犯罪は早々に無い。 水に恵まれ、四季が存在するこの地域は作物に恵まれていた。私の両親も農業を営み、生活の基盤としている。その為首都との取り引きが多く、運用には首都からの馬車が頻繁に行き交いしているのをこの5年間で知った。 そしてこの世界には私が居た世界と同じ様に学校が存在するらしく、私は来年から学校へ通う事になっている。 会話はともかく文字は全く読み書き出来ない。本を読もうにもそれが出来ないのだから不自由だ。学校へ行けば最低限の知識は取り入れられるはず。 今は…まだ一応5歳児なのでめいいっぱい遊ぼう。 アニメや漫画が無いのは辛いが仕事をしなくてもいい環境は最高だ。 「アレスティア、そろそろご飯の時間だ。帰っておいで。」 「はーい!」 父に呼ばれ、私は子供達…友達と別れた。 彼は私の手を取るといつもの優しい笑顔を私に向ける。 父はヒューガ、母はアインといい、若い二人は私をとても可愛がってくれた。初めての子供がこんなんで申し訳なくなるが、私は両親に恵まれたと思っている。母の作るシチューは格別に美味しく、一番の好物となった。 「ふふっ、そんなに焦らなくてもシチューは逃げないわよ。」 「だって美味しくて。」 「アティーは本当にシチューが大好きだよな。もう少し大きくなったらお母さんに作り方を教えてもらうといいよ。」 「うん!」 元の世界での私は料理をあまりする方では無かった。買い弁や冷凍食品、それか外食ばかりしていた。 一人暮らしだと一人分の料理を作るのが面倒に感じたからだ。栄養が偏らない様にメニューは選んでいたが相当不健康だったと思う。 温かいベッドで眠る度に、次に目を覚ました時には病院のベッドの上かもしれないと何度考えただろう。戻りたくない、なんてね。
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