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翌週の日曜日。俺は犯罪まがいのことをしていた。
「ーーー…先生!久しぶりっ」
「夏目さん、久しぶり!」
「も〜、先生そろそろ百合って呼んでよ〜!」
そんなやり取りを隣で…ではなく、近くの街路樹の陰から見つめていた。
黒のキャップを目深く被り、黒の大きめのサングラス、不織布のマスク。顔をほぼ覆った状態で、服装もほぼ黒。どう見たって不審者だ。
なぜこうなったかと言うと、今朝も例のイケメンの話で一悶着あって、「絶対行かねえから!」と言ってしまった手前、堂々と着いて行くことなんて出来ず。かといって、そんな伝説のイケメンが居るところに大切な彼女を大手を振って送り出すことも出来ない。
その結果が、今の俺だ。
玄関先で、追加で二言三言、言葉を交わした2人は、そのまま家の中に入っていった。
…さて、ここからどうするか。
さすがに覗くなんて本気の犯罪だし、だからと言ってこの寒空の下、ずっと待ってる訳にもいかないし。
素直に「俺も来た」って言うか…?
チラチラ家の様子を伺いながら、スマホで連絡しようかやめようか考えていると、
ーーーウチに、何か?
背後から声がして。
驚いて振り返ると、男性が1人、立っていた。
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