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「そう言えばさ、あの手紙の子はどうなった?」
「…手紙?」
「ホラ、昨日貰ったやつ」
「ああ!」
すっかり忘れていた。ポケットを探ると、クシャクシャの封筒が顔を出す。
「お前、忘れてただろ」
「…ちょっとだけ、」
「父さんに怒られるぞ、」
忘れないうちに封を開ける。と、封筒と同じ柄の便箋が出てきた。
「このご時世に手書きのラブレターねえ、」
「カワイイじゃん、俺、こういうの好き」
呟くと、卜部が大声で「皆さま!一ノ瀬大翔はラブレターが好きだそうです!」と叫んで冷やかした。慌てて卜部の頭をハタく。
「良い加減にしろよ、」
「すみません、どうぞ読んで下さい」
促されて、便箋を開いた。
「えーっと、一ノ瀬くんへ。突然のお手紙ごめんなさい…ーーー」
中を読むと、彼女は受験の時に席が隣同士だったらしく。酷く緊張していた彼女に、俺が「すごい緊張してるね」とか「大丈夫だよ」とか声を掛けたそうで。その時からずっと好きで居てくれたらしい。で、良ければ交際がしたいとの事。俺に彼女が居たことも知らず、突撃してくれたようだ。
「えっ、お前、そんな少女漫画みたいな事したの?」
「いや、全然覚えてない。人違いじゃないかな、と思ってる」
「いやでもこの顔は間違えねえだろ!」
暇すぎて、隣の席の人と話した記憶はあるけど。話した内容なんて覚えてないし、むしろ男だったか女だったかも覚えてない。
「でも、初めて顔以外の話だな、」
「うん、それ思ってた。ちょっと嬉しい」
手紙の隅に、連絡先が書かれていた。それをスマホに打ち込む。
「え、付き合うのか!?」
「いや、まだ分かんね。顔覚えてないし」
「可愛かった気はするけど…」
「とりあえず確認。可愛かったら付き合うかも」
言い終わるのと同時に、メッセージの送信が完了した。
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