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【企画】講師と教え子と時々先生
「西澤 凛子さんって覚えてる?」
ある日の食卓にて。見栄えの悪いオムライスを掻き込んでいると、百合がそんなことを言い出した。
「…誰?」
「ホラ、大学の時に英会話の臨時講師で来てくれたでしょ?覚えてない?」
記憶の糸を辿る。そう言えば、教授と仲良いとかなんとかで、若い臨時講師が来ていたような気もする。
「…それがどうかした?」
「来週の日曜日、お家にお邪魔することになったから。ひろくんもどうかなって」
「…何のために?」
何で俺が、顔すら覚えていないような人の家に行かなければならないのか。
半ば呆れたように尋ねたら、
「西澤先生、妊娠して生活スタイルも変わるから、家具を新調するんだって。古いモノが多いけど、欲しかったらあげるって言ってたから…ほら、ひろくん、おっきいベッド欲しいって言ってたでしょ?」
と言われた。
お前、俺が大きいベット欲しいなんて恥ずかしい話、他所でしてんじゃねえよ!一緒に寝たいって思ってるの、丸出しじゃねえか…!
「つーかお前、仲良かったっけ?」
「女子は結構みんな仲良かったよ。海外でお仕事してたみたいだから、面白い話いっぱい聞けたし。新婚さんで、旦那さんの話とかも聞かせてもらって」
へえ、女子が好きそうだな。
他人の惚気話なんて、何の興味もない。
と思って聞いていたのに。
「なんかね、すっごいイケメンなんだって」
と彼女が付け足したから、聞き流す訳にもいかなくなった。
イケメンって…お前が思うイケメンって俺だけじゃなかったのかよ…!?
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