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「ミスターコンでダントツ優勝したことあるって、伝説になってる人なんだって。知らない?西澤 慶一郎っていう人」
内心動揺しまくっていたけど、平然を装って受け答えする。
「…ミスターコン?そんなのうちの大学にあったか?」
「昔はあったんだって。ご時世的になくなったけど」
「へえ、」
そんなチャラついたイベントに出るくらいなんだから、どーせ大した男じゃねえよ。父さんだったら「俺はそんなの出ても迷惑かけるだけだから」って謙虚に断りそうだ。
そう思って心を落ち着けたのに、空気の読めない彼女が、
「学祭実行委員の部屋に、アルバムがあってね。見たことあるんだけど、すっごいイケメンだった!」
と言い放った。
そうなると、もう引くに引けなくなってしまって。
「あ〜っそ、そのイケメンの旦那目当てで、西澤先生に会いに行く訳?」
と、刺々しく言い返してしまった。
すると彼女が唇を尖らせる。
「違うよっ、むしろ私だけで見に行ったらひろくんが嫌がるかと思ったから誘ってるんじゃんっ」
「別に嫌がる理由なんてねえよ、一人で行ってこい。ベッドはお前が欲しいなら貰って来れば?俺は運ぶの手伝わねえからな!」
思ってもないことを捲し立てて、オムライスの残りを掻き込む。
彼女は眉を八の字に垂れて、テーブルの隅を見つめていた。
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