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私の大好きな人
私には、大好きな人がいる。
好きで好きで仕方なくて、四六時中その人の事を考えていて。彼の為なら何でも出来る。彼の為なら死ねるとすら思う!
「ひろくん、おはよう!」
マンションのロビーで駆け寄って、満面の笑顔で声を掛けたのに。彼は眉間に皺を寄せて、私を睨みつけた。
「朝からうるさい、静かにしろ」
彼はマンションの隣の部屋に住む幼馴染で、私の初恋の人。その不機嫌そうな顔ですら、世界一格好良い。
卒業式の日にまた彼女が出来たらしいし、そうで無くても全然 脈は無いし、毎日罵声を浴びせられているけど。少しでも一緒に居たくて、朝からロビーで待ち伏せしていたのだ。
「ね、昨日のドラマ見た?」
「そんな暇ねえよ、つーか着いて来んな」
「何でそんなこと言うの!」
大股で歩く彼。どんどん距離を離される。だけど負けじと走って追いかけた。
「待ってよ、ひろくん!」
すると突然、彼が立ち止まった。胸が高鳴る。やっと隣が歩ける…!
と思ったのに、彼はぐるりと振り返って、私を睨み付けた。
「いい加減にしろよ。その呼び方やめろって何回言わすんだ…!」
怒鳴りつけて、また踵を返す彼。
その背中を、めげずにまた追いかけた。
昔は、ひろくん、ゆりちゃん、の仲だったのに。中学に上がってから、突然「夏目」と苗字で呼ばれるようになった。
おまけにすぐ彼女なんて作っちゃって。中学だけで8人って多過ぎない?長続きしなさ過ぎでしょ!
だから彼に彼女が出来たって、どうせ別れるから気にしていない。最後が私であればそれで良いと思っている。
そのために必死で勉強して、同じ高校に入学する事が出来た。クラスは離れちゃったけど、チャンスはまだ2回ある。それに、このまま大学までついていくつもりでいるから、クラスなんてさして問題じゃない。
とにかくポジティブシンキング。想い続ければ何とかなる!
とはいえ、彼には過去9回、フラれた経験がある。初めてフラれたのが中1の時だから、1年に3回フラれている計算だ。ちなみに返事をもらっていない告白も入れたら、その回数は数十回にものぼった。
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