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ヒステリー女の最期
始業前。席に座ってボーッと窓の外を眺めていると、肩をポンと叩かれた。
「よう、」
「おう卜部、おはよ」
後ろの席に座ると、卜部が囁いた。
「さすが、中学イチの色男。今日もファンがわんさか来てるな!」
言われて廊下側の窓を見ると、確かに女子が大勢集まっていた。
「…別に、俺を見に来てるワケじゃねえだろ、」
「またまたァ、そろそろ認めろよ?」
卜部は、中学からの悪友。家にも遊びに来た事があるし、きっと、俺のことは何でも知っている。
「認める、って何を…?」
「俺はイケメンだ、って」
「はあ?」
確かに、人よりモテている気はするし、俺と話す時に女の子は大体頬を染めるから、薄っすらそうなのかなと思ってるけど。別に鏡を見て、俺ってイケメンだな、とは思わない。
「…なあ、俺の顔ってそんなに格好良いか?」
本気で尋ねたのに、卜部は鼻で笑った。
「…嫌味か?それ」
「違ェよ、真剣だっつの」
「分かってるよ。お前はそういうとこ勿体無いよな。俺がその顔なら、もっと遊びまくるのに」
そして、溜め息を吐かれる。
「DNAに感謝しろよ。お前の親父、イケメン過ぎるからなあ」
それは、激しく同意だ。父さんくらいのスペックなら、イケメンだと認められる。
うんうん、と大きく頷いた。
「そうなんだよ。父さんイケメン過ぎ」
すると卜部はまた鼻で笑った。
「いや、お前、顔面ソックリだからな?」
「…マジ?」
目を見開く。
父さんに似てるだって?それはマジでイケメンかもしれない。中身は遠く及ばないけど、顔面だけなら。
「それは最高、マジで嬉しい」
思わず、笑みが溢れて。そう呟くと、思い切り茶化された。
「出た、ファザコン」
「うるせえ!」
ちょうどそのタイミングで、始業のベルが鳴った。
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