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 私は出産祝いのご祝儀袋をおいてそのブタ小屋をあとにする。美花には訪れるべき病院と奥様の名前を伝えた。私からの連絡を全て遮断している由之はきっとまだそこにいる。  秀樹には「すぐにご連絡差し上げます」とだけ小声で囁いておいた。秀樹は鼻の穴を膨らませて「はい、ぜひ」と返事をする。私は楓花にハグと投げキッスをしてから、ブタ小屋に背を向けひとりでほくそ笑む。  仕掛けは上々だ。出産なさった友人の奥様には『ご主人様とお付き合いさせて頂いております』『近いうちに参上させて頂きます』という文面のメールを送っておこう。シャワーを浴びている間にアドレスは簡単に知れた。フリーアドレスからのメールを見たら、奥様はたいそう心を痛められることになるだろう。  自分の夫の相手はこのブタなのかと、仰天するに違いない。私の双子達はどんな顔をするのだろう。それが起こる前に、私はパパブタを手懐ける。一撃で、ブタの首根っこを掴んでやるのだ。  何もかも壊れればいい。大雨が降ればいい。雷が鳴れば晴れ間は近い。私の心に歓喜の鐘が鳴り響く。そうなって初めて、私は本当に社会の中で光り輝くことが出来るのだから。
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