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 私と美花(みか)は双子だ。  とは言え二卵性双生児。確かによく似た顔の作りをしているけど、区別がつかないなんてことはない。だから初対面ならいざ知らず、2回会えばもう私達を間違える人はいなかった。だって私と美花は、全く違う性質を持っているから。  美花は大人しく内気な性格をしている。対して私は、活発で勝ち気だ。この性格の違いは子供の頃から如実に表れていて、ずっと同じクラスに配されてきた私達は『男の結花(ゆか)と女の美花』なんて区別の仕方をされてきた。  確かに私は男勝りで美花は女らしい。子供というのは、大人が考える以上に物事の本質を見抜いている。幼い頃に下されたこの評価は変わることなく私達は大人になり、年頃の娘ふたりに親すらもこんなことを言う始末だった。 「美花はきっとすぐに素敵な旦那さんをみつけるだろうけど、結花は大丈夫なのかしらねえ。この先ちゃんと嫁の貰い手があるのか、お母さん不安になってしまうわ」  母の言葉だ。昔は私達にお揃いの服を着せ、同じヘアスタイルにセットしていた母は、私のダメージジーンズを畳みながらため息をついた。隣には、美花のふんわりとしたロングスカートがぴしりと真四角に畳まれている。 「……いやあねお母さん。あたしはぼんやりしてるから、きっと男の人も退屈に思って相手になんてしてもらえないわ。その点結花はモテるのよ。おしゃべり上手でとてもお友達が多いんですもの。大学でもボーイフレンドがたくさんいるの。あたしなんかより、結花の方がきっとずっと早く結婚をするに違いないわ……」   母の言葉に、紅茶が入ったカップを片手に美花はそんなふうに反論した。柔らかい笑みを浮かべて。私はその時床に座ってペットボトルのコーラを飲んでいた。私は床であぐらをかいたまま、自分の意見を悪びれずに披露する。 「そうかしらね。お母さんの杞憂はきっと現実のものになるわ。私は結婚する気なんて皆無ですもの。男以上に出世してひとりで食ってく。美花は鈍感だから気付いてないかも知れないけど、あんたを見てる男はいっぱいいるのよ。テニス部の桜井(さくらい)に数学科の蓼科(たてしな)。『キャンパスに咲く一輪の白百合』なんてあだ名がついてること、知らない訳じゃないんでしょう?」
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