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 大学を卒業して、私は出版社に就職した。  ファッションが好きだった私は女性ファッション誌の編集者を目指していた。第一志望の大手出版社に就職したが、配属されたのはゴシップを専門にする写真週刊誌。そこは男社会でファッションの香りなど微塵もなく、理想の職場とは言い難かった。けれどそこで私は懸命に働き、新人記者としてはそれなりの功績を挙げ、編集部に自分の居場所を見出していた。  対して美花は、料理教室に講師として就職した。全国に多数の教室を持つ、料理スタジオの専任講師だ。子供の頃から料理好きだった美花は、大学を出る頃には玄人はだしの腕前を見せるようになっていた。私もよくご相伴に預かったが、ケーキはケーキ屋で買ったものよりも美味しかったし、おせちなんて高級料亭のものにも引けをとらなかった。  確かな技術と柔らかな雰囲気を持つ美花は、生徒達に大変な人気を誇った。そのあまりの人気に、私が所属する写真週刊誌が『大人気料理講師 畑山美花(はたやまみか)のすべて』なんて特集を組んだほどだ。  美花の生徒は、女性も多かったけれど半分は男性だった。世間一般には料理教室に通う男など珍しい。要は客の半分は美花の色香に寄るスケベ男達で、だからうちの男性向け写真週刊誌も美花に目をつけたというわけだ。 「お前、姉ちゃんなんだろう。説得してグラビアを撮らせろ。裸エプロン、間違いなく大反響になるぞ」  編集長はそんなことを言ったけど、私は身内を売るわけにはいかないと頑として首を縦に振らなかった。私達は双子だけれど、大人になった今ではもう誰もそれに気づかないほどに雰囲気が変わってしまった。私は男勝りなゴシップ雑誌編集者、美花は柔らかく滴るような色気を持った、男を魅了する人気料理講師。  私達は実家を出て、それぞれ別に部屋を借りて暮らしていた。美花は私と一緒に住みたがったけれど、私がそれを拒否した。あまりに性格が違う美花と一緒にいる時間が、私は不快で仕方なかったのだ。  いつも綺麗な部屋。美花は寝る時にも美しいネグリジェを着る。起きればすぐに外出着に着替える。大体はロングスカート。それにフリルのエプロンをつけて、鼻歌を歌いながら楽しそうに朝食作りに勤しむのだ。
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