第1章 タイム・トラベル

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2.  しばらくロビーで待っていると、雄二が戻ってきた。俺たちを困らせた罰として何かおごらせようかと思ったけれど、要が先に物を言ったのでやめておいた。 「もうさ、いなくなるんなら言っといてよ。急にどっか行かれたら困っちゃうじゃん」 「ああ、おう。悪かったな……」  さっきのは冗談だったのだろうかと思うくらい素直に謝罪の念がこもっていた。もしかしたら、さっきの俺に言ったことは冗談だったのかもしれない。 「んでさ、この後どうする?昼まだだったろ」 「あ、うん。それなんだけどさ……」  要が恥じらうように言った。  「私の弟も一緒だけど、いいかな?」  要の弟。つまり、さっきあの一般人からしたら広すぎるコートで激しいぶつかり合いをしていた選手の一人だ。ただ、だからといって敬遠する理由にはならないので、俺も雄二も快諾した。  三人で時間を持て余していると、ロビーの奥からエナメルバッグを肩にかけた少年が見えた。  「あ、おーい。柳太ー」  要がその姿を捉えて、彼と思われる名前を呼んだ。すると、彼は恥ずかしそうに小走りで寄ってきた。  「もう姉ちゃんさ、不特定多数の前で人の名前堂々と呼ぶの止めてくれない?」  「えー、いいじゃーん」  「ダメだっての」  二人のやり取りをほんわかした目で見ていると、要の弟―柳太君―がこちらを見てとんでもないことを言った。  「えっと、姉の彼氏さんですか?」  「ち、違う違う。ただのクラスメイト。いきなり何言い出すのさ」  「いや、何ていうか、すっごい彼氏みたいな雰囲気を感じたんで」  本当にこの子が、さっきまでコートの上でボールを投げまくっていた選手と同一人物なのだろうか。いやに律儀で、接しているこっちが苦しくなる。  「も、もう。何言ってんのよ、この弟はー」  要は赤面しながら柳太君の額を中指の第二関節でぐりぐりする。それに対して、柳太君は迷惑そうにそれをどけた。  「柳太、お昼まだでしょ? 私らと一緒にする?」  「あ、うん。メッチャ腹減ってる」  結局、昼はここの近くの氷見うどんを出す店で済ますことに決まった。
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