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スポーツセンター―ふれスポ―を後にした俺たちは、ふれスポに一番近い氷見うどんの店に行った。入ってみると、壁や柱が全て木製だった。よほど前から営業しているのだろう。
「すいませーん、氷見うどん4つお願いしまーす。うち一つ大盛りで」
要が慣れた様子で厨房にまで届く声で注文した。
要、ここよく来てんの?」
「ううん、年に一回来るかどうか」
「やっぱり、柳太君の兼ね合いで?」
「そうだね。柳太の通ってる中学って、富山市内で一番強いらしいよ」
さっきまでの会話からして、何のことについてなのかはすぐに分かった。だから、俺はそれ以上詳しいことは聞かずに黙って頷いておいた。
「あの、姉が迷惑かけてませんか? この人、突拍子もないことばっかりするんですけど……」
柳太君が申し訳なさそうに尋ねてきた。さっきから思っていたことだけれど、彼はコートでプレイするときとは打って変わって、非常に律儀なのだ。試合中は、隙あらばディフェンスの間をすり抜けてシュートを決めていくワイルドな選手なのに、その皮を脱ぐと多重人格者みたいに人相ががらりと変わる。
「ううん、そんなことないよ。消極的なのも嫌な性格だしさ、俺。まあ、こいつはどう思ってるか知らないけど」
無論、雄二だ。注文の時は要に先を越されたから仕方が無いとして、今くらいは普通に会話に参加してもいいはずだ。なのに、さっきから雄二は椅子の背もたれに背を預けてスマホに目を落としている。細目も相まって、ちょっと見方を変えれば寝ているように見えなくもない。
「あ、そうだ。まだ名前聞いてませんでしたよね」
「え、あ、そっか。ごめん、遅れて。俺は最上拓真。で、俺の隣で寝てんのかスマホ見てんのか分かんないやつが、流川雄二」
「なるほど。あの、拓真さんと姉って、どういう関係で?」
事情聴取みたいな聞き方をしてくるなと思いつつ、俺は答えようとした。けれど、その直前に思い出した。
(俺の状況をどう説明すればいいんだ?)
この世界の人間に、自分は違う世界の人間だと言って何になるというのだろう。今の今まで忘れていたけれど、俺は本来であれば未来に生きる人間なのだ。仮に正直に話したとして、彼らに信じてもらえるか。
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