第1章 タイム・トラベル

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 俺が返答に答えあぐねていると、彼の隣に座る姉が言った。 「今年の始業式の日に席が近くて仲良くなったって言ったでしょ。忘れたの?」 「そうだったっけ?」  要はなおも「そうだよ~。忘れっぽいんだから~」と言って茶化しているけれど、俺には不気味に思えた。まるで、俺が答えられないことを知っていたみたいにフォローしてきたからだ。俺が口を滑らせて話してしまったなんてことはないから、余計不気味に思える。  とはいえ、この場面でそんなことを表面に出すのは筋違いだということも重々承知しているので、俺は気にせずに要に合わせた。 「そうそう。始業式の日に席が隣だったから、その場のノリと勢いで」 「じゃあ、雄二さんとは?」 「雄二も拓真と一緒」  要がまた横やりに似た助け舟を出す。よく分からないけれど、要に合わせたほうが難を逃れられそうな気がした。 「柳太君はさ、なんでハンドボールを始めたの? やっぱり要の影響?」  今度は俺が柳太君に聞いた。単純に疑問だったのもあるし、何よりこんなに丁寧な少年がどうしてあんなに激しいスポーツに携わっているのかに興味があったからだ。 「そうですね……。姉がやっていたというのもあるんですけど、一番はマイナーだったからですかね。マイナーだったから、どんなスポーツなのかが気になったんだと思います」  柳太君は手探りと言った口調で言った。そしてもう一つ、俺は気になっていたことがあった。  「さっきの試合見てて思ったんだけどさ、ハンドボールって結構暴力的だよね。反則とかないの?」  「ありますよ。口で言うと難しいんですけど……」  柳太君はできるだけ素人にも分かりやすいように、紙とペンを用いて説明してくれた。明らかにシュートを打てる場面で妨害したらペナルティとして7mスローが行われること。危険な行為をした場合には2分間の退場命令が出されること。オフェンスに真正面から守りに行けばチャージングを取られることなどを、分かりやすく教えてくれた。  そうこうしているうちに全員分のうどんが運ばれてきたので、俺たちは揃って舌鼓を打った。
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