第1章 タイム・トラベル

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3.  昼食の間は終始無言だった。雄二はともかく、俺も、柳太君も、あの要でさえも静かだった。この世界での記憶を遡らせてみると、確かに要は食事の時間は静かだったのを思い出した。  氷見うどんを堪能した後、俺たちはこれからについて話し合った。 「この後どうする?」 「帰りまでまだ時間あるけど」 「雨晴海岸の夕日見てみたいです」 「それいいね!」  結果、柳太君の案が採用されて、夕方まで時間を潰してから雨晴海岸へ行くことにした。  店を出ると、夏の日差しを真下に受けてすぐに汗が流れてきた。ここ最近は本当に気温の上昇の仕方が半端ない気がする。 「あっちぃなぁ……」 「ホント……。まだふれスポにいた方がマシだったかも」 「明日もこんな中で練習すんのかー。ダリィ……」  口ではそう言っていた柳太君だけれど、その顔は俺たちに比べたら幾分か余裕そうに見えた。平日練習はほとんど外でやっているらしいから、きっとそれで耐性が付いたのだろう。肌が少し焼けているのも納得できる。 「柳太―、よくこんな中で走り回れるわね……。私だったら無理かも・・・」 「姉ちゃんだって中三の今頃まで同じ状況下だったんだろ。まあ、引退して動かなくなったらそうなるか……」  姉弟のやり取りを後ろで聞いていた俺は、流れ出る汗を拭いながら僅かに笑んだ。この二人は本当に仲の良い姉弟だ。俺は一人っ子だから、そういうのに少しばかり憧れがある。 「拓真」  後ろから雄二が言った。さっきまで一言も喋らなかった奴の声だからさぞ驚くかと思ったか、でも残念。俺はたいして驚かなかった。後ろからついてきている気配が分かっていたし、仮に驚くようなことがあってもそれを精一杯隠すのが俺の性分だ。滅多に自分の動揺を表には出さない。 「何だよ、どうかしたか?」 「ほれ」  突然、雄二の手からペットボトルが飛び出してきた。しかも二本。ついさっき動揺を表出しないと言ったが、あれは訂正しよう。不意にボトルを投げられたら誰だって驚く。  俺はその投げられたボトルたちを手に収めた。この季節にはありがたいアクエリアスだった。 「二人に渡してやれよ。さすがにマズいだろ」 「おう。てか、お前こそ大丈夫なのかよ。汗ダッラダラじゃねえか」  他人を優先して自分を後手に回す。雄二はそういう性格なのだと、改めて知った。
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