第1章 タイム・トラベル

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「ほら」  俺は前を行く二人に歩み寄って、それぞれの首筋に冷えたそれを当ててやった。 「きゃっ!!」 「うおわ!!」  二人とも同じような反応をした。あまりにもそっくりだったので、俺は思わず笑ってしまった。 「ちょっと拓真! いきなりやめてよ、ビックリするじゃん!」 「でも、拓真さんいいんですか? 自分の金で・・・」 「いや、これ雄二がお前らに渡してやれって」 「え、そうなの?」  俺が頷くと、要は俺の後ろにいる雄二に目を向けた。俺もつられて見ると、雄二は顔中から汗という汗を流れさせていて、今にもぶっ倒れそうだった。 「ったく、しゃあねえな」  俺は見ていられなくて、近くにあった自販機で適当にグリーンダカラを買って雄二に差し出した。 「……?」  「お前さ、自分のこと後回しにするのは良いけど、限度っつうもんがあるだろ。このまんまじゃ、お前が先に倒れちまうだろうが」 「ああ。ちょっとやり過ぎたわ」 「ちょっとどころじゃねだろ。顔中の汗腺という汗腺から余すことなく汗が噴き出てんじゃねえか」  俺は蹴りの代わりにキンキンに冷えたペットボトルを雄二の顔に押し付けた。雄二はそれを申し訳なさそうに受け取ると、一気に半分近く飲んだ。  俺はその様子を見て安心した。たとえ俺たちの会話には無関心でも、こうして付き合ってくれているのだから、これくらいのことは当然だろう。  要たちが水分を摂っているのを見て、俺も自販機でアクエリを買って飲んだ。喉を通して体に入っていくそれは、暑さで弱った体に活気を取り戻してくれた。  それから俺たちは、夕方まで時間を潰した後、雨晴駅で落ち合った。 「このあとの電車って何時に出る?」 「19時47分だってよ」 「結構遅いね。親に連絡しとく?」 「そうだな。あんま遅くなって連絡も無いんじゃ、これ以上の迷惑になんねえし」  ということで、俺たちはそれぞれの親に帰りが遅くなる旨の連絡を入れた。誰もがすんなりと終ったということは、たいした釘刺しが無かったということだろう。俺の親も然りだった。 「んじゃ、そろそろ行くか」  俺たちは快晴の黄昏時の下、雨晴海岸へと歩き出した。
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