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◇
健彦は陽がとっぷり沈んでも、自室のカーテンを閉めずに過ごすことが増えていた。
向かいのアパートに住む、あの女性の帰宅を見届けるまでは。
◇
正月をだらだら過ごしていたら、あっという間に冬休みは明けた。
三学期の登校初日から数日後。
中学一年生である石田健彦は憂鬱になっていた。
やばい。このままでは、本当にやばい。
教室で冬期休暇の課題を提出してから、筆記試験が行われた。その内容は課題の中から出題されるもので、定期試験に比べると出題の数も少なくて易しいものであった。
但しそれは、日頃から勉強をしている者にとっては、だ。
同級生たちは口々に「思っていたよりも簡単だったね」と、笑い合うほど余裕。
しかし、中学に上がってから授業に付いていけなくなった健彦にとっては苦行だった。
課題は、こなしたんだけどな。全然、身に付いてない。俺、中学に進学してから、授業に付いていけなくなってる。
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